2011年10月16日

統計入門 乳がん 後半



前回の「前半部」をアップしてから数時間でいくつもメールが届いています。
いろいろ予想してくれてありがとうございます。


みなさんも、予想を立ててみてくれましたか?




人間の認識は「予想を立てることによって高まる」のです。
ですから、間違っていてもまったくかまいません。
何しろ、予想を立てて眺めること
が重要なのです。


乳がんの統計について、続けましょう。


私の授業プランで比較的よく売れているものが
「近頃のわかものは」といって、
若者の犯罪統計をまとめたものです。
若者たちの犯罪はぜんぜん増えてない、という実態を統計資料を使って明らかにしたものです。


そのプランには「統計を見ていくための重要な視点」をいくつかまとてあって、そのひとつが
「統計の元データにあたる」
というものです。


ということで、乳がんの罹患率がどのくらいなのか、見ていきましょう。


web上で見つかるように
「4人に1人」なのか?
「16人に1人」なのか?
そのどちらでもないのか?


元々、データのソース〔元〕を明らかにしていない数字は怪しいのです。


こういう病気の統計でまず頼りになるのは行政機関の出している数字です。
行政の出す数字は何でも正しいということではないのですけど、とりあえず病気の数の拠り所となる数字とはいえると思います。


厚生労働省のデータを探してみました。
そこには年代別の病気罹患率が載っています・・・なぜかH14年版なのですけど、ま増減があってもそんなに大きな開きは無いと思います。

※データは10万人当たり何人か、という数で表したものです。


これを見ると驚きます。

たとえば、20代〔20-29歳〕では、0.1千人・・・つまり0.1%しか乳がんになっていません。
30代で、1.3千人・・・1.3%です。
40代で4%
50代で5%
です。

あなたが30代だとすると、100人に1人がかかる割合です。
つまり、30歳から39歳までの十年間に乳がんになる人が100人に一人は出ている、という数字です。
これは高いのでしょうか、低いのでしょうか?
見方にもよるのでしょうけど、単純に「4人に一人はガンになる」と思って戦々恐々としている人達からすると、あまりにも低すぎる値だとは言えないでしょうか?

しかも、癌になったら死ぬというのは昔の時代で、今ではいろいろな治療法があります。
100人に一人に当たってしまった人も、なんとかなる率がしっかりとあるわけです。


では、こういう数字をどういじれば、「女性の4人に1人は乳がんにかかる」という結果になるのでしょう?

それはつまり「すべての年代」を合計したからです。

これは、年齢を調整せずに出した「祖罹患率」です。

もう眠いので、細かく説明する時間がないのですけど、こういうことです。

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http://ganjoho.jp/public/qa_links/dictionary/dic01/sorikanritsu.html

粗罹患率(そりかんりつ)


一定期間の罹患数(ある病気と新たに診断された数)を単純にその期間の人口で割った罹患率で、年齢調整をしていない罹患率という意味で「粗」という語が付いています。日本人全体の罹患率の場合、通常1年単位で算出され、「人口10万人のうち何例罹患したか」で表現されます。年齢構成の異なる集団間で比較する場合や同一集団の年次推移を見る場合には、年齢構成の影響を除去した罹患率(年齢調整罹患率など)が用いられます。
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もう一つ、数字を高めている要因があります。
その値は、乳がんを独立させている数字ではなく、例えば肺がんにかかった人が、いろいろなところに転移して、乳がんも発生してしまったという場合にカウントされるのです。


ところで、厚生省のデータではなくて、国立がんセンターの統計があります。
国立がんセンターといえば、日本最大のがん治療センターです。

これは厚生省のデータよりかなり低い値を示しているので驚くと思います。
http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html



この統計だと、女性が一生涯で乳がんにかかる率は6%・・・100人中6人というのです。

統計の数字というのは、本当に驚くべき差を生むのですね。


最近のデータによると(ソースは見つからないので申し訳ないのですけど・・・)、乳がんのピークは早まったようです。

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http://dentalhakase.web.fc2.com/

乳がん

乳がんは、乳汁を作り分泌している乳腺という組織にできるがんです。日本女性の発症のピークは40~50代となっています。

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文科省の統計を拠り所にする人も、国立がんセンターの統計を拠り所にする人も、とにかく、

例えば50代であれば、「もう乳がんにかかるピークは過ぎた」と安心して良いのです(^^

あるいは、そのピークの40代の人たちは、年に一度の検診を受けて、私は元気だわ、と安心するといいのです。

その他の年代の人達も、すごい数の人達が乳がんになると心配し過ぎずに、
私の年代では○%の人が乳がんにかかる可能性があるのね、というカンジで考えてよいのではないでしょうか?


乳がんになって死亡する率はどのくらいでしょう?

国立がんセンターが算出した数字があります。
http://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html



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